レポート

小規模不動産特定共同事業制度の活用

2019/12/28

 

SPCに必要な2つの要件

二重課税を回避できること

  • SPCに実質的に法人税が課税されない仕組み
  • 不動産証券化では、SPCの収益を投資家に分配することが重要なため
  • 二重課税を回避できない場合、不動産を直接保有した方が節税になる
  • 組合や信託のようにそれ自体が課税主体とならないSPCを用いる(パススルー型)
  • 特定目的会社(TMK)や投資法人(REIT)のように、一定の配当・分配のルールを満たせば投資家への配当金・分配金を費用として損金算入できるSPCを用いること(ペイスルー型)

 

倒産隔離ができていること

  • 不動産の所有権がオリジネーター*1からSPCに確実に移転し、譲渡が法的に有効と認められること、「真正売買」であることが必要
  • SPC自体が倒産しないようにすること
  • 不動産証券化しか行わないことをSPCの定款で定め、本業とは無関係な事業でSPCが倒産しないよう措置を講じる
  • SPCの取締役が、経営破綻の状態でないにもかかわらず、会社の清算申請を裁判所に提出することは投資家への背信行為のため、役員から「清算申請をしない」といった内容の念書を提出させる

*1 オリジネーター:証券化する不動産を売却する個人や企業などの主体を指す

 

不動産証券化における資金調達

1.エクイティとデット

SPCは主にエクイティ(投資家)とデット(金融機関)から資金を調達する

エクイティ:匿名組合出資や優先出資証券、投資口の購入を通じて投資家から払い込まれる「資本」

デット:金融機関からの借入れ、あるいは債券発行により調達された負債

 

SPCが倒産した場合、最初に現金を回収できるのはデットの投資家(金融機関)

近世消費貸借契約で返済期限や金利、コベナンツが定められているため、SPCが債務不履行状態に陥ったら、すぐに債権保全措置をとったり借主の期限の利益を喪失させる

エクイティはデット返済後に残った資産の分配を受ける権利を持つにとどまるため、デットはエクイティに優先する。これを「優先劣後構造」という

エクイティの方がリスクが高い分、SPCが利益を上げた時のリターンも大きい

 

2.ノンリコースローン

リコースローン:債務者以外の他の事業主体に債務の返済を要求することを遡及または李コースという

ノンリコースローン(非遡及型貸付):債務者以外の事業主体に返済を要求できない融資

 

SPCがデットを返済するための原資は、原則としてSPCが保有する不動産の収益に限定される。契約通りに返済されるかは、その不動産の収益力次第

ノンリコースローンを貸し出す金融機関は、不動産の収益力を厳しく審査する。

リスクが高いと判断された場合は、リスクに見合ったリターンを確保するため、金利を上乗せして貸し付けることになる

 

3.信用補完

不動産証券化は、負担するリスクに応じて投資家は収益を受け取る仕組み

リスクに対処するため、スキームの信用力を強化したり、流動性を保管する仕組みを「信用補完措置」といい、内部信用補完と外部信用補完がある

キャッシュリザーブは、内部信用補完の1つ。SPCが資金繰りの逼迫時に備え、現金の一部を保留する

 

SPCの運用形態

  • SPCの運営機関は基本的には役員(取締役等)が1名で、中立的な公認会計士などが就任する(飯田市の証券化のケースでは税理士が取締役)
  • 倒産隔離を図るため、オリジネーターとSPCの人的・資本的な関係を遮断する
  • SPCの役員は不動産投資の専門家である必要はなく、実際の不動産投資や資金調達に関しては、第3号業者(宅建業者)に任せることになると思われる。
  • SPCには従業員がいないため、事業はもちろん会計処理すらできない。そのため、自社のマネジメント、法的なチェック、会計や資金繰りなど業務のほとんどを外部に委託することになる

 

不動産証券化スキームの分類

  1. J-REIT
  2. GK-TK:組織形態の簡便な合同会社に不動産信託受益権の形で購入する。デット(負債)は金融機関からのノンリコースローン、エクイティ(資本金)は匿名組合(TK)を組成。実物不動産にすると、不動産特定事業法が適用され、一定の人的財務的基盤が必要とされてしまう
  3. TMK
  4. 不動産特定共同事業
    • 不動産会社が自社のバランスシート上で、実物不動産の小口化商品を組成販売、組合や匿名組合等の形式を利用して投資家から出資を募る
      → 小口化商品の販売以外の事業の失敗による倒産に小口化商品が巻き込まれる可能性がある
    • 2013年6月に改正され、同年12月より施行された不動産特定共同事業法では、小口化商品の事業実施主体をSPCとし、商品を扱う事業者とは分離した
      → 小口化事業を事業者の倒産から隔離できるようになった
      → SPCを届け出によって特例事業者として認め、その業務を不動産特定共同事業者(許可制)に業務委託できる仕組みに改正
    • 倒産隔離ができることにより、GK-TKスキーム(信託受益権)にして不動産特定共同事業法から逃れる必要がなくなった
      → 既存不適格の建物、瑕疵がある建物は信託銀行に受託されない可能性があり資金調達が難しい
      → この改正により、耐震に問題がある不動産をSPCに売却し、耐震化工事+コンバージョンなどができるようになった
    • 2017年12月施行の不動産特定共同事業法では、3号事業者申請に関する基準の緩和が図られ、資本金1,000万円以上の宅建業者も申請者となれる

SPC(特別目的会社)が特例事業者(届出制)

特例事業者から業務委託を受けてSPCの運用に携わるのが不動産特定共同事業者3号・届出制)

匿名組合で二重課税を回避する

匿名組合

匿名組合は営業者がそれぞれの匿名組合員と契約を結ぶため、出資者間に直接的な関係が生じない

匿名組合は組合であるため、法人がかからないが、分配された段階で匿名組合員に所得税や法人税がかけられる(二重課税の回避)